などというあの形式的な催しは嫌いですけれども、アメリカでそれに類似した催を見た時には、すっかり好きになりました。何故って、あちらの人達はそういう仕事をする場合に皆なの心が集って、ふんわりと大きな空気を造ります、みんなの感情が本当によく一致するからでありましょうね。それから戦争中でしたから自由公債《リバテーボンド》というのが度々募集されました。自由公債とはアメリカの政府が今度の大戦争の費用を調達するために発行した公債です。国を思う人々は誰でも争うて政府のために、売り歩きました。こんなときにはお母さんが勧誘して歩くのにまけまいと、少女達も、小さな穴の明いた箱を抱えて、通行する人達に
「叔父さん、入れて頂戴、リバテーボンドです。私達の国のために!」
と声をかけて勧めて居りました。もう沢山自由公債に応じた人でも、こうした少年や少女達の可憐なすすめに逢うと、
「宜しい《オーライ》[#「宜しい」にルビ]。さあ、いれましょう」
といって、洋服のポケットに手を入れるのを見うけました。入れる人も気持がいいのです。
私が街を通っておるときにも、よく
「姉さま、いれて頂戴」
と云って、少女たちが寄ってきま
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