の警察連絡にはラジオが利用されるが、鉄道にはそれが利用しようともされていないというのが、今日でも、日本の現状であるのだろうか。
わたしは全波のラジオが早く聴きたい。破産しても支払えないほどの金を払わないでも、聴けるように日本の生産技術が進んで欲しいと思う。
ラジオただ一つをとってさえ、わたしたちの今日の生活における様々な可能性と、それを実現する手段との間には、これだけ巨大な開きが存在している。可能性が、単に可能性として止っているなら、やがてそれは可能性でさえなくなってしまう。何故なら、可能性というのは、その実現に努力献身し、その結実を確保する、という条件があって、はじめて人間生活の貴重な現実的モメントとなって来るからである。わたし達は、自分達が真に勤勉であり、進歩の実現に対して真実の努力を傾けつつあるか、ということについては、鋭い自省をもたなければならないと思う。可能性があるとき、それを実質のある現実のものとする努力を怠れば、それはもう私たち各自が、自分を責めなければならない懈怠と云われるべきなのである。[#地付き]〔一九四六年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本
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