反対の意見をのべた読者皆さんの熱心な投書をのせている。その中でいけないのがあるとか「時評」にわるいところがあるとか、つまり毎号意地悪く発禁攻めにしても大衆の伸びる力はおそろしい。次第次第に育って来る『働く婦人』をつぶす口実を、編輯長である私の答弁の中からひっぱり出そうとするわけです。
いくらブルジョア、地主の官憲がいけないといったところで、わたしら働く婦人みんな本当に腹から帝国主義戦争には絶対反対なのだし、雑誌の調子がきつくなって来たといわれても、わたしらの生活の土台となっている資本主義の世の中の行き詰りがまず日増しにきつくなって来ているのだから仕方がない。『働く婦人』の問題は、「尊厳冒涜」という意味のところで一応納まりました。「敏子」さんの投書と、「愛子」さんの投書の中に、共産党という三字があって、これを幸とつかまえられたのです。
四十日ばかり経つと、いつの間にか、調べの中心点がかわってきた。初め私は日本プロレタリア文化連盟のことで調べられていたはずなのに、今度はお前は日本共産党に金を出している、その点を明らかにしない中は決して出さないぞということになって来たのです。みなさんはもちろんよく承知していられる通り、日本共産党の同情者《シンパサイザア》であることは悪いことでもないし、恥しいことでもないと思います。しかし、ブルジョア、地主の悪法「治安維持法」というものは、それをキッカケに階級的に目ざめた大衆をかたっぱしから投獄するよう、わざわざ制定されてあるものです。悪辣きわまるその「わな」とも闘い抜いて私は八十日の後自由をとり戻したのですが、みなさん忘れてならないことは現在十数人のわれわれの同志たちが日本プロレタリア文化連盟から奪われて投獄されているという事実です。中には演劇同盟員・「コップ」婦人協議員沢村貞子、同じく演劇同盟員北原幸子という二人の若い同志もいます。日本にプロレタリア文化運動が始まって以来未だかつてなかった今度のがむしゃらな大暴圧が「コップ」に加えられたというのはなぜでありましょうか? 戦争準備のためです。
帝国主義日本はすでに満蒙を侵略し、ソヴェト同盟攻撃をもって口火を切るべき第二次世界戦争を実に着々と準備している。来るべき第二次世界戦争と十八年前の第一次世界戦争との違うところは、今度世界戦争が始ればそれは世界の帝国主義と世界のプロレタリアート・
前へ
次へ
全4ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング