」という主婦の言葉はそれが買いにくいからこそである。買えれば、さっさと黙って買うだろう。ほしいものというものは、きょうの勤労者の実際では、和田長官が、しつけのわるい子供をしかりでもするようにいっている内容とはまるで違う。生きられるだけの物がほしいのである。こういう切実な「ほしいもの」がみたされずにいる八千万の生存を、政府の人々はおそろしいと思うべきである。人口の九割五分をしめる勤労者の主婦や、働く婦人、未亡人たちは、ただ一人として片山首相夫人のように、ひとさまが下さるものは頂いて、ヤミ買いをちっともしないで一家がまかなえるような境遇にはいないのである。[#地付き]〔一九四八年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「アカハタ」
1948(昭和23)年1月8日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
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