ふたつの教訓
宮本百合子
三鷹、松川事件、どちらも労働者階級の闘いの歴史にとってきわめて重大な教訓をしめしていると思います。事件の具体的な内容についてはどちらもすべて明らかになってきています。
私たちが真剣に学びとらなければならないことは、これらの事件がどちらも労働者としての生死にかかわる生存のためのたたかいの慾求に出発していることと、それにたいして労働組合の闘争の方向、テンポが、かならずしもそのひとたちを十分指導しきらない点をもっていて、このさけ目が敵の謀略に乗ぜられたという点、三鷹事件も、松川事件もこの点では共通の動機をもっていたようだし、この点が同時に敵に着目され、全く組織的にちょう発を準備されたと思います。
大衆の要求を正しくみちびくことになにかの不足が生じている場合、または大衆の革命的行動の理論が客観的正当さを欠いている場合、つねに敵のちょう発がその弱点にくいこむということをハッキリ教えています。
私は素直にいって一つどうしても不思議なことがあります。それは三鷹事件でも松川事件でも、敵が目をつけるぐらいの職場の積極分子である労働者たるものが、どうしてやりもしないこと
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