厘=三百七万八千余人は婦人労働者だ。いろんな工場の、工場委員には女がうんといる。金属工場で、婦人労働者の議長と書記とに指導されているところさえある。
 ブルジョア婦人参政権論者をガッカリさせる勢で、ソヴェト・プロレタリアート婦人は、ソヴェト役員に選挙されつつある。だから、ソヴェト同盟では、往来を腕から籠をブラ下げ粗末ななりで歩いてる一人の女でも、うっかり馬鹿にはされない。彼女は工場で工場委員会の文化委員をつとめ、町ソヴェトの役員で、ガッチリした消費組合員、労働組合員であるのが決して珍しいことじゃあないんだ。ソヴェトでは、誰一人、ひとの儲けのために働かされているものはない。生産がたかまって、国が豊かになれば、その割前が、いろんな社会施設となって、てんでの日常生活にかえって来る。労働法は、婦人労働者に産前産後四ヵ月の有給休暇をきめている。その上、月給の半額までの出産支度金と、赤坊がうまれてから九ヵ月間、牛乳代を貰う。そういう権利を守るために、ソヴェトの労働法は姙娠五ヵ月以上の労働婦人と生後十ヵ月の子持ちの労働婦人を解雇することを禁じている。モスクワにいたとき、私は、或る区の産院を見て、ホントに羨しく思った。考えて見ろ。どこもかしこも清潔で、なめてもいいような産院は、まるで無料でプロレタリアの母のために開かれているのだ。しかも、無事に赤坊を産んで家へかえると、その産院から、その母子が住んでいる町の嬰児健康相談所へカードがまわって、それから後は一ヵ月に一度ずつ赤坊を診て貰える。無料だ。区、工場の内、新しい住宅で、托児所、幼稚園のないところはない。
 ソヴェトでは、次の時代の前衛、子供をよく育てるために最大の注意をはらっているといっしょに、婦人の文化向上のために、実に熱心に考えている。女に一番つらい洗濯、炊事、それを社会化するために、女に休みと勉強の時間を与えるために、大仕掛な厨房工場、洗濯工場が、ドシドシ出来てゆく。今、やかましく云われているソヴェトの五ヵ年計画は、ブルジョア反動家が宣伝するように、軍備拡張だけでは決してない。文化建設のために大きい予算をもって、例えば日本の教育費削減とは反対に、ソヴェトでは国庫負担の学校、托児所、教員がうんとこの二三年の間に増やされる。――
 ソヴェトの勤労婦人は、生産と政治の内へより積極的に参加するにつれ、社会主義の社会を建設してゆくこと
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