ラチラかがやいて
ほんにきれいじゃないかいナ
シャナリシャナリとねって行く
赤いおべべの御猿さん
かつらはしっくりはまっても
まっかな御かおと毛だらけの
御手々をなんとしようぞいの
それでも名だけは清姫さん ほんとにおかしじゃないかいナ
土間に坐った見物の
御重の間につややかな
ながしめくれてまいのふり
泣く筈のとこまちがって
妙なしなして笑い出す
ほんに笑止じゃないかいナ
つまたてて
ソッとのぞいた猿芝居……
火取虫
ブーンととんで来るきまぐれものよ
御前の名前は何と云う
丸いからだで短い足で
それでたっしゃにとぶ事ネ
私は前からそう思う
ころがる方がうまかろと
むぎわらざいくのそのような
青いせなもつ火取虫
ガスのまわりをブンブンと
羽根のたっしゃをほこるよう
小供がうちわでおっかけた
小さい火取は斯う云った
「何んて云うおなまな御子だろう
貴方に羽根はありますか
これが私しのにげどこで
天のかみさまなんてまあ
細工のうまいこってしょうね」
小さい火取はなおブンブン
ガスのまわりをとびまわる
なんぼたっしゃな火取でも
よっぴてとんではいられない
羽根をやすみょとて床の上
ジューたんの上におっこった
するといきなり骨ばった
でっかい指がニュッと出で
体を宙にもちあげた
そしてその手のもちぬしは
ズーズー声でこう云った
「なああんた、おらが先ごろ飼うて居た
七面鳥が大すきで
くれればきりがあるまいネエ、……」
棚のだるま棚下し
ひげのおじさん貴方はマア
何と云うどえらい御方だろう
朝でも晩でも欲の皮
つっぱりきったねがいごと
それかなわぬとあたりつけ
わしに湯水も下さらぬ……
片っぽ目玉のそめられた
棚のだるまさんの口こごと
何と云うばった御方じゃあろう
千両箱がふえます様
倉が沢山たちますよう
着物が沢山出来ますよう
とくいが段々ましますよう
おじさんのねがいはこればかり
何と云うばった御方だろう
めっかちだるまさんの口小言
棚の上から
棚下し
女房もらえば子が出来る
子供が出来れば金が入る
金が入っては大変だ
女房のきりょうがわるければ
店のかんばんにもならず
ただくうてねて金が入る
それでは事がめんどうと
ひげのおじさんは一人ずみ
御念の入ったばり方と
びっくりおどろくだるまさん
月に一度は大師さん
参る
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