、それぞれが、このがたぴしした資本主義社会生活の矛盾そのものの中に自分をらく[#「らく」に傍点]に流してゆく溝をもっている。これに反して、新しい人間生活のために暗渠をつくり、灌漑用水を掘り、排水路をつけて、自身の歴史をみのらしてゆこうとする事業は、まったく新しい事業である。一揆、暴動などという悲劇的な正義の爆発の道をとおらずに、人民の全線が抑圧に抵抗しようとする事業は、わたしたちにとって新しい。この広汎な人間的めざめを土台として、新しい民主的作品が大衆の生活に浸透する必然をもちはじめたのである。この現実から民主的文学運動における批評は、全く新鮮な任務を帯びている。民主主義文学運動の批評活動は、ブルジョア批評の仕事のように一つ一つきりはなされた作品の枠内での研究、またはせいぜいある一人の作家の限界内にとどまった系統的研究から、ひろく大きく人民の民主革命の現実の中に解放された。批評活動と創作活動とは、ともに、刻々前進する人民の歴史によって生れつつ、またその歴史のよりのぞましい変革のために作用してゆく有機的な人民階級の能力の一表現となってゆかなくてはならないと思う。
 現在の状態では、サーク
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