に、どのように望ましい力として自己を再発見するか、ということは、簡単に保証できない。その人の階級的人間性が、どのように階級としての理由によって覚醒されているかということに多くの比重がかかって来る。階級の文学を、組合主義、目先の効用主義一点ばりで理解するように啓蒙されて来た人があるとすれば、その人は街の角々に貼り出されていた矢じるし目あてに機械的に歩かせられて来ていたようなものだから、一夜の大雨ですべての矢じるしが剥がれてしまったある朝、当然わが行手に迷う当惑に陥る。階級的人間形成の道としての政治、文学の教育は、つけられた矢じるしをたよりに、かけ声かけて走る人々ばかりをつくることではないわけだった。権力とその結托者たちの残虐性によって、どのような孤立におかれようとも、世界の人民としての階級連帯の感覚、その文学としての人民としての人民的世界性を見失わない一個の階級人として構成された存在、その方向へ自主的に発展してゆく可能を与えるものであるはずではなかったろうか。
 現在民主的な新しい文学を念願して、そのために生活的にも文学的にも努力している人々の間に、いくつもの同人雑誌が発刊されている。最
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