した場合を考えても、そこに落着きの見出せる人は少いであろう。自分の心でどう思っていても、それにかかわらず、そういう変動の或るものには生じて来るのであって、しかもそれを凌いでゆくのは、結局自分たちの心の働きによるしかない、そこに真面目に生活を考えている人々の現代の沈潜的な態度があると思う。
 真面目に現実的に結婚について考えている人は、今日ではその落付かなさの上に立って、その中で生活を建設して行こうという決心をしているのが実際である。危くなりそうな安定を求めて、結婚の前に逡巡するのではなくて、それを一応はこわれたものと覚悟して、だがそのなかで新生活を創ってゆく、その心持であると思う。この二三年の歴史の動きは若い人々に或る抵抗力と積極性とを与えたと云えよう。
「小さいながらも愉しい我が家」という片隅の幸福が獲《と》れなくなって既に久しいことであるが、今日から明日への若い人々は自分たちの愛を道傍の仮小舎でも出来るだけ活したいという気になっていると思う。そして、そのことのためには、愛が益々その智慧を深めることが求められて来ている。
 愛にはよく永遠とか、永劫変らぬとかいう形容が飾りとしてつけら
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