るとなると、これまた組がやることになる。重り重った借金を会社は株で払うしか方法がなかったので、昨今の景気は或る組を相当な株主にしてしまった。仕事があっても、これでは儲けが皆組へ行ってしまって、会社は益々貧血するので、あるところに廃工場となっていたのを復活させて、それを組にやって、吸血をまぬかれたというのである。組の現場監督の下の親父と、その下につかわれている労働者たちとの関係は、親父が社宅をぶらりぶらり見てまわって、そこに作ってある野菜なんか、一声かけて、さっさと気に入ったのを抜いてゆくという風であるそうだ。親父の息子と喧嘩すると、その子の親たちは顔色をかえる。娘やおかみさんとしてはそのほかになかなか安心ならない親父対女の事情まである。
直接この話と関係はないが、先達て汽車の中で隣席の男が大きな声で、いやア、あの男はやりおる。何しろ君、工場の主だった者あ毎晩のように芸者買いさせとるんだから、と云った。するとその連れが、疑わしげにニヤニヤしながら、土台本人が好きなのさ、と云った。そして、そういうことをする者があるから、はたが困るよと云いながら、どういうわけか、頻りに腹がわるいんならこれ
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