えて行くのと見くらべて白い歯を出して笑った事等が新しい事の様に目前にくりひろげられた。「私達はこれから仇うちをされるんだ」二人は老いて骨ばった手をにぎってこんな事を思った。
お龍の心に住む光りもののひろがる毎にその美くしさはまして昔から話にある様な美くしさと気持を持って居るのを知ったのは二親きりではなかった。いきな模様の裾長い着物に好きでかつら下地にばかり結って居た様子はそのお白粉気のないすき通るほどの白さと重そうに好い髪とで店の若いものがせめてとなりの娘だったら附文位はされようものと云ったほどの、美くしさをもって居た。
十六の時自分の名がお柳と書くのをいやがってどうでも「お龍」とかく様にしろとせびっていろいろ面倒な手つづきまでさせてお龍と書く様にしてもらった。しおらしくみどりの糸をたれる柳、まして三十三《やなぎ》間堂のお柳と同じ名で自分の心とはまるであべこべだと云っていやがったのだ。
「女は柔[#「柔」に「(ママ)」の注記]しい名の方がどれだけいいんだか……
私の若い頃は名のあんまりすごい女はいやがられたもんだ……」
母親が娘の苦情をきいた半に斯う云った。
「ソウ、咲くかと思
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