第3水準1−91−24]子はしきりに思ったけれ共、お久美さんが行ってから幾分か心のおだやかになったお関は前よりはよほどくつろいだ調子で、ほんとうに話をして居る気になって種々の半年間に起ったこの猫の額程の村の「事件」を話して聞かせた。
けれ共※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はもう浮腰になって仕舞って、どうしても落つけなかった。
来なければよかったと云う悔と、お久美さんに対する一層のいつくしみが混乱した気持になってそれからじきに※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は祖母をせきたてて家へ帰って仕舞った。
二
次の日はどう天気がぐれたものか朝から秋の様にわびしい雨が降って居た。
昨夜はあんなに好い月だったのにやっぱり天気がまだかたまらないと云いながら家の者は陰の多い部屋にこもって、各手に解き物をしたり、涼風が立つ頃になると祖母が功徳だと云って貧しい者に施すための、子供の着物だとか胴着だとか云うものを小切れをはいで縫ったり口も利かずにして居るので、皆から離れたがらんどうな大部屋にポツンと居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1
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