口を利く人がなけりゃあ困ると思って居る所へ山田の主人が来てその話を聞くと、何の訳が有るものか、私がうけ合って取ってあげると約束をした。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が来た時分きっと取ると云った山田からは音沙汰ないし、自分の方でもいつまでも穴をあけて置き度く無いからと云うので祖母は気を揉んで居る所だった。
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「ほんとに山田さんもどうしたんだろうね。
 あんなに確り受合って居ながら何とも云ってよこさないんだよ。
 私もほんとに困って仕舞うよ。
[#ここで字下げ終わり]
 祖母は茶の間で新聞を読んで居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子にこぼした。
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「ほんとにねえ。
 だけれど、お祖母様も御たのみなさりようが悪かったもの。
 あんな人にどうして金の事なんか御委せなすったの。
「だけれどお前、丁度私が、来て居なすった小学校の先生とその事を御話し仕て居る所へ来て『ウン、そんならわしが引きうけた』と云うんだもの。
 彼の人に断ったってどうせは誰かにたのまなけりゃあならないのだから、又己を好いと断りながら誰に頼んだとか何とか云って面倒が持ちあがるから、仕様事なしにたのんで仕舞ったのさ。
「そりゃあ、そうかもしれないけれど、
 『そうですね。おたのみする様だったら又改めて私が上って種々お願い仕ましょう』
と云って置いた方がようございましたね。
 たのむ頼まないは此方の勝手なんだから彼の人が何と云おうが確かな人にした方がどれだけ安心でよかったか知れない。
「そりゃあお前はそう云うけれどね、
 きまり切った顔が殖えも減りもしない此の小さい村ではそんな事が大した事なんだからね。
 何でも私みたいに皆の世話に成らなけりゃあならない者は一人でも敵を作るのはよくないのだから。
「それもそうですね。
 それで何なの、お祖母様、どうなって居ましょうかってお聞きにでも成った事があって。
「あああるともね、この間中は日参して仕舞った。
 明日は町へ行きますから行らしって下さいって云うから行くと彼方の主人が居ませんからまた明日出なおして行きましょうと云ったりして、一日だってはっきりした事は分らないんだもの。私がいくら気長だって腹も立とうじゃあないか。
「一体どの位お貸しなすったの、そいで何をして居る家なの、彼方
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