ために明らさまな若い女の魅力を流れ出させた。
お関は一人の娘を段々に仕立あげて行く時の力に反感を持たずには居られなかった。
そして、お久美さんに或る自然的な変化が起った時にもお関は何の助言も与えずにまごまごして居るお久美さんの当惑した顔を見てむごい快感を得て居た。
お関は可愛がろうと酷め様とお久美さんの事に就いては傍の者が口出しを出来ないのだとは思って居たけれ共、只一人※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子と云うものが何かに付けてお久美さんの肩を持ち、事によったら自分を差し置いても種々な事を引き受け兼ねない様子で居るのが、何より不満でもあり不安でもあった。
山田は※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の家の要求には或程度まで従って行かなければならない位置に有るので、思う通りの事をしてかなり自分の云い分を通して居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が真剣に成って其の周囲を説き付ければ或はお久美さん一人位の面倒は実際見ないものでもないと思う事はお関にとって苦痛であった。
余裕のない生活の中からお久美さん一人の減ると云う事はその影響も小さい事ではなかったけれ共、若し自分の手元からはなれた彼女が思わぬ手蔓に思わぬ仕合わせに会う事が決して無いとは云えないと思うと、どうしてもお関は※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に油断が出来なかった。
何かにつけては、
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「彼那我儘な人と仲よしになったりして、一体お前はどうする量見なのかい。
あのお※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんなんて、お前一体どんな人だと思って居るのかえ、
御飯たく事も知らない様な人の云う事を一から十まで有難がって顎で指図をされて居るんだもの。
今に好い様にされて仕舞うのはもう私にはちゃーんと見えて居る。
馬鹿も好い加減におし。
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などと云ったけれ共、お久美さんはだまって聞いて居るばかりで、お関の望んで居る様な結果になろう筈もなかった。
お関は今更自分の迂闊が悔やまれて、子供の事だからと、今日の様な事を考えもしずに始めに介《かま》わず遊ばせて置いたのがそもそもの手落ちであった等とも思い、見掛けによらず執念くして居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−2
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