、嘘などを逆《さかさ》に立っても云いそうもない所等は却ってお久美さんに厭な思いをさせる許りで有った。
諦めなければならないと云う事をお久美さんは知って居た。
けれ共彼れ程好く嬉しく想って居た事が斯うまで裏腹に行こうとは余り思い掛けなかった。
大切に育てて居た子を急病で一息の間に奪われて仕舞った時の様な諦め様にも諦めのつかない歎きが心の奥深く染み込んで、重三を見る度にその堪えられない苦痛が鮮やかに浮み上って、お久美さんを苦しめるので有った。
お久美さんは※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に皆話して仕舞おうかと思っても見たけれ共、自分より年下のそんな事を云いも考えも仕ないで居るらしい者に恥じに成ろうとも知れない其等の事を明すには何だか不安であった。
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「まあ厭だ、
私そんな事知らないわ。
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と一口に笑われて仕舞いそうに思えて、今まで一言も云った事の無い事を切り出す勇気は無かった。
お久美さんは※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が何の屈託も無さそうに一日中好きな物を読んで好きな事を考えて、厭になれば響ける様な声で歌を歌ったりして居る様子を思い浮べた。
彼那に楽に彼那に好きに仕て居れば誰だって利口になれると思えた。
どんな人だって、自分に仕て呉れる位の力添えや相談は仕て呉れるにきまって居ると思えた。
彼んな暮しを仕て居る人に到底今の私の苦労が分るものじゃあ無いと、お久美さんは此頃めっきり育って、種々※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の知っては居ないと思われる感情を経験した自分の心を尊く眺めた。
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「お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんなんてほんとに世間知らずだわね。
そりゃあ呑気なのよ。
彼那子供みたいな風をして一日中勝手な事ばっかりして暮して居るんだもの。
やっぱり年が若いんだわね。
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等と独言の様に云って※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の事と云えば賞めるとしか思って居ない小女を驚かせたりして居た。
お久美さんは今までの此那に長かった間何故自分が斯う思わずに過して来られたかと云う事が疑われる様で、七年の間の事が皆他所の噂を聞く様な気がした。
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