まった第二回の執筆禁止は、一九四五年八月十五日、日本の侵略的な天皇制の軍事権力が無条件降伏をするまで、五年の間つづいた。
中断されたこの時期に、評論集としては、『昼夜随筆』(一九三七年)『明日への精神』(一九三九年)『文学の進路』(一九四〇年一月)などが出版されている。『文学の進路』のほかの二冊の評論集にも、文学についてのものがいくらかずつ収められていた。
この選集第十一巻には、四十二篇の文芸評論があつめられているが、特徴とするところは、これらの四十二篇のうち、二十七篇が、はじめてここに単行本としてまとめられたということである。久しい間、新聞や雑誌からの切りぬきのまま紙ばさみの間に保存されていたものが、はじめて本として生れ出ることとなった。
この評論集に書かれた内容、書かれざる内容をもたらしている八年の歳月は、プロレタリア文学運動が挫かれてのちの日本現代文学が、戦争の拡大と強行の政策に押しまくられて、爪先さがりにとめどもなく、ファシズムへの屈従に追いこまれて行った時代であった。歴史とともに前進する批判精神を失って沈滞した文化・文学の上に、さも何かの新しい発展的理論であるかのように
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