『地上に待つもの』に寄せて
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)略《ほぼ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三四年十二月〕
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此度山田さんの自伝的小説『地上に待つもの』が出版されるに当って、何人かの友人らに混って短い感想を書く因縁に立ち到ったことを私は一種の感動をもって考えるのである。
山田さんは、『種蒔く人』時代から日本のプロレタリア文学運動に参加して、本年二月ナルプ解散前後の多難な時をも経、略《ほぼ》十年間、波瀾に富んだ闘争の道を歩いて来た。
私が山田さんを知ったのは一九三〇年の暮旧日本プロレタリア作家同盟の活動に参加するようになってからのことである。僅か三四年の間ではあったがプロレタリア文学運動にとって意味深い様々の経験を共にした。しかし私は今日見る山田さんがその背後にどのような経歴を負うているかというようなことについては極めて知るところが少なかった。当時の事情では、そのような思い出話を、ゆっくりきくにふさわしいような機会もなく、過ぎていたのであった。
『地上に待つもの』は、単に山
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