「迷いの末は」
――横光氏の「厨房日記」について――
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)河豚《ふぐ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)複雑|極《きわま》る質問に、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ヴル※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]ール
−−

『文芸春秋』の新年号に、作家ばかりの座談会という記事がのせられている。河豚《ふぐ》礼讚、文芸雑誌の今昔などというところから、次第に様々の話題へ展開しているこの記事は、特に最後の部分、二・二六と大震災当時の心境についてそれぞれの出席者が所感を語っている部分に至って、読者の感想を喚《よ》び出す幾多のものを示している。徳田秋声、菊池寛、久米正雄等の作家たちが、震災以来今日までの十五年間に生きて来た社会的な道すじ、及び今日それぞれの人々が占めているこの社会での在り場所というものを、自ら読者に考えさせる言外の暗示を少なからず含んでいるのである。
 この座談会で、次のような話が交
次へ
全20ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング