そういう条件をつけて募集されたのですから、賞金を出されなければならないならば、私としては、手記にあらわれている範囲で、最も生活が経済的に苦しいと判断されるかたに最も多い賞金を与えたら、と思います。みなさまの御考えはいかがでしょうか。
 その場合、散文の方が短歌よりも判断の具体的なよりどころを示しております。短歌はむずかしいことだろうとも考えられます。しかし賞金のことは、どうか皆様、お話し合いの上心ある御処置を期待いたします。
一、もし文集として編集される見とおしがあるならば、わたしとしては、三篇五篇というなかには入らなかった記録のうちで、収録されたいものがあります。様々の生活のありかたを公平に照し出し、読者にそれについての省察を自由にして貰う条件をひろくするために。たとえば、短歌で入っていられる神戸照子さんの手記(これは二通あります、只今手もとになくて、そのどちらをと申しかねますが)。第三回目の分に保健婦である婦人の手記があったと思います。それから告白など。悪戦苦闘手記にかたよらず、人はいろいろむずかしさを通して、人間らしくどう生きるかということをひろいところから考えに訴えるように
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