た」の三つの文章にあふれている苦痛と、理性、勇気などは、その人々にそうと自覚されている程度は浅いにしろ、何と、この世界の女性の動きに通じたものだろう。
 苦しみの窓々よ、ひらけ。そして、その苦しみを解決しようとして働いている世界の善意と努力とが、わたしたちみんなの日常のものとなるように。

          二

 生活の日々が、夫に死なれた妻の悲しみや愛慕の感情もいつとはなしにおし流して四年、七年と経った今日、気がついて眺める自分の心の中では、かつての愛や悲しみも、歩いて来た道のうしろに遠のいて、みちしるべのように立っていることに驚く。十四篇の原稿のなかには、いくつかそのような心の推移が語られていた。「告白」はそのようないきさつでの立場が、自然にその人の人生にくみとられて語られている。前回の分とあわせて三十篇近い記録のなかで、戦争に対する抗議が社会の問題としてのひろがりをもって表現されているのは、「愛と戦いと」の結末であった。「茨の道を踏み切って」生きる方法をくみたてた人の闘いの姿はおそろしいばかりである。上級軍人の妻であったということからうけた特別な苦痛を、筆者は、はげしい実行力
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