「保姆」の印象
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はにかみ[#「はにかみ」に傍点]のようなものが感じられて、
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「保姆」いろいろの意味で興味ふかく観た。シナリオを書かれたのが厚木たか氏という女性であることも、そしてこのひとは以前「文化映画」を翻訳しておられることも、こういう種類の記録映画の制作に何となし期待させるものがあったと思う。
 シナリオを書くのも随分根気よく保育所の毎日の生活を一緒に経験しつつ、作られて行ったときいている。
 勤労の生活をしている両親の子供たちを、保育する仕事をとおして、母親の再教育へという保育所の成果を、ありのままの瞬間の中にとらえて物語ろうとした制作者たちの意図は、熱意も十分感じられ、かなりまで表現されていたと思う。
 保育所の界隈の街の様子、往来に溢れている生活、それから家庭の中へ、親たちの仕事場のまわりへまでカメラが動いて行った深さは、よかった。
 こういう縦の追求は「保姆」に非常に生活的な奥ゆきを与え、描写そのものがみるものにたくさんの人間生活の課題を暗示して、真
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