なると長屋グループがよこさぬ。五人ぐらい失った。
〔欄外に〕いつ首をキラれるか分らないという日常の不安。
――――――――――
一どきに何も彼も喋ってしまった。
托児所になじみが浅いのに。
[#ここで字下げ終わり]

 荏原では移動に力を注いで、うちをからにした。
 うちに一人おいて、外へ三人。
 市電のキキン募集に冷淡 応援委員会への話に対して、反応しない。
「さあこの頃はどうですかね、この頃は早ねをしてしまいますからね」
「出なけりゃいけないんですけれど、あいにくその晩親類に何々があって――」

 去年の秋。
 加藤勘十の労救の城南の懇談会をもった。
 渡辺さんが出た、
 大崎へひっぱられ、九十日間おいた、
 托児所へかえるな、それじゃいる、

 一月十九日の晩の父母の会。
 このときは古い人はとられ(四人)あずま、かめいどから応援 労救の人のおくさん。
 三人で子供十七人
 集ったものは七人 父二人、母五人 皆職場がある。

 藤倉
 ――足袋(百人)トラゴム
 印刷(行政学会印刷所)二百人
 田中製作所
 新興河上[#「新興河上」に枠囲み]
 保母三人、
 中心は、どうしたら保母をとりかえすか 弾圧をしないようにするのにはどうするか、
 十二月から十九日までの被害、その対策、報告を分タンして
 消費組合からしょうゆのこと[#「しょうゆのこと」に「を貰った」の注記] 米を二本
「お父さんお母さんたちに相談して貰いたいところは、」
「タクちゃんのお父さん」
「々のお母さん」
 ◎一人のこらず意見を出した。
 ◎散漫であるが、いろんな不平、
 警察へ押しかけて行ってたのもうじゃありませんか(田中皮工場へ出ている人の女房三十三ぐらいの女)
 うれしいのをこらえて、
「そうですねエ、それはいい考えだと思いますが、皆さんどう思いますか?」
「私はこう思うよ、」
 ビラを出してほかの工場でもオーエンして貰う
 大家の方へ交渉するようにしよう、
 褓母をもっと沢山ボ集しよう
 子供の数をふやし お父さんの数をませば警察がダンアツしたって大丈夫ですよ
 ○托児所のホ育費を上げよう
 ◎おむつを洗う石ケン代を一ヵ月十銭出そうじゃないか、
  それは、オーエンのときおむつを洗ったお母さんの意見、洗ったとき沢山いった。
 行政学会のおとうさんが
「やっぱり署長に行ってたのむしかないですね」
 屑やのお父さんも賛成。
 タビやのお母さんは
「警察のうらだから工合がわるいと思う」
 行政学会
「今そんなことを云っているときでないでしょう 私はやすんで行きます」
「私はどこでも行って云うからいつでも」
 行政
「あした金曜だから土曜日だったら、一晩とまったっていいよ、みんな都合はどうだろうね」
「じゃ警察へ行くことは決定したんですね」
「ああ、そりゃ きまったんだ」
 あさってというのは 一月二十一日のレーニン・デーだときがつき ハッとする、
「二十一日なら私 となりのおかみさんもつれてゆくよ」
「じゃおかあさん工場どうします(タビ)」
「私もじゃやすむ」
 ――――
「工場がひけてからがいい」
「その時分じゃもうひけていないよ」
 行政学会が 九時に行こう、托児所(八時半)
 こんどは褓母がいっちゃいけない。みんなだけでゆこう。
 屑やのお父さんがこの前、褓母を迎えに行った。そして誰にそそのかされたかときかれたから

「行くときのことを話さない?」
 大崎の特高の入口はせまい。下でぐずぐずさせちゃいけない、
「誰かあすこ知っている人居ない?」
 裏から入ることにする、
 話すことをきめる。
  一、褓母を早くかえしてほしい
  一、托児所のところへスパイが来ておどしたり、ものをもって行ったりしてくれるな。
 みんな話について一人一人が自分についての実験
 屑やのお父さん おいて行ったら迷子になった、
 そのあと、おしるこなどをのんだ。

 二十日、平常のとおり
「おばさん、時間ちゃんとね」
「大丈夫だよ」
「あしたよろしくね」

 二十一日、雪もよいの寒い風の日
 六時半ごろから子供をあつめる。
 屑やのお父さんが自転車で七時ごろ来る、
「おじさんどうしたんです タクちゃんは?」
 引こしがあってその荷もつを
 八時半までにつれて来る
「小母さん、じゃ煉炭に当ってて下さい ひぐまいさんが来ればすっかりそろっちゃうから」
 行くというのが父母が十三人 みんな子供をつれて行くということ。
「キットスパイが来るから 私のうちに行ってろ」
「留守たのむよ」
 という。

「何だ 何だ 何だ、お前たち何だ デモか?」
 先ず入って行ったおっかさんの頬っぺたを打った。
 屑やのお父さんが
「デモじゃない、私たちはおねがいに来たんだ」

「何故あんなことをする
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