ぐる四人の男の情痴の世界を読むよりは、今日「大衆」の真面目な「大人」の心配は、子供をどうして育てるかにかかっているであろう。
文部省の教育方針が本当にかわれば、中学へ息子をやるにさえ、家庭の資産状態が調べられなければならない。数年前デパートの女店員は家庭を助けたが、今は家庭が中流で両親そろい月給で生計を助ける必要のないものというのが採用試験の条件である。「大人」に憂いが深いばかりか大人になりつつある若い男女の心も、訴えに満ちている。世の中は何故こうなったのだろうか、という問いが体に満ちているのである。
作家がもし大衆の心の描きてならば、この生々しい、生活によって発せられている「何故」という二字をとって、作品の中に生きかたを知らしてくれるはずであった。
ところがある作家たちは、今日直接それを書こうといわず、別な範囲の「大人」の中心問題を大衆に分るように描こうと提唱しているのだが、それならばその「大人」の世界はどんな姿をもっているのであろうか。このことは一つの簡単な質問とその答えとで明らかにすることが出来る。官吏、軍人、実業家の大頭の連中が、待合にゆくのが遊蕩であると考える俗人を脾
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