な群集心理の階級的な誘導である。下山氏の死が、自殺か他殺か、明らかにされない条件は、あらゆる暗示をこめて反民主的、反労働者的な疑惑に人々をひきこむために活用されている。ドイツの国会放火事件ばかりでなく、世界の人民のたたかいは、いつもデマゴギーと挑発のわな[#「わな」に傍点]をしむけられる。日本のこれまでの現実をみても、テロを行ったのは、どういう人たちであったか。
桑原武夫氏が十日の毎日で「引揚げ」という文中に、インターナショナルをうたって引揚げて来た人々を見て政府がびっくりしたからといって、すぐその「驚き」の感情を「取締り」に転化させることのあやまりを警告していた。わたしたちの「驚き」は、反人民的な心理戦術に利用されるほど素朴であってはならない。[#地付き]〔一九四九年七月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「青年新聞」
1949(昭和24)年7月19日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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