いるものだということは、分ったと思います。
 あなた一人としては、偶然物わかりのいい親切な青年を夫とすることが出来れば一応問題が解決したように見えます。
 けれども、万一、好都合に行かなかったらどうでしょう。
 お互に女です。幸福に生きたい願いは一つです。その幸福は、今のままの世の中の仕組みではわれわれ金のない、自分の力で働いて生きてゆくものには与えられません。わたし達は働く者全体が幸福に暮せるような世の中にするため熱心に働き、いい世の中にして行かなければ自分の幸福も来ないわけです。

        良人と私の思想について

 この頃のようにサシ迫った世の中になり、働く者プロレタリア、農民の利益とそれを搾るブルジョア、地主の利益との衝突がハッキリして来れば、自然わたし達の生活にも、人間らしく生きるためには、どっちについて、どっちの味方となって闘って行かなければならないかという問題が起って来るのです。
 日日新聞や、朝日新聞、そのほか山ほどあるいろいろの婦人雑誌でも、古くから「身の上相談」はやっていますが、あなたのような問いは、今の世の中にどんなにか多くの婦人が苦しんでいることだのに一
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