て飛び交っているのであるが、最も興味あるべきこの世界ニュースの聴取が日本では極めて狭い範囲に止められているのはどういう理由からであろう。日本の民間のラジオ機は短波を受けられないことになっている。短波こそ、今日の電波の世界の尖端の活動をしているのである。
 ラジオ・サービスとして移動ラジオ相談所を設けたり、明朗聴取運動をおこしたり、様々の点で聴取者の便宜は考えられている。そういう細部での便宜があればある程、聴取者の心持に、こういう調子で短波も受けて、アメリカやフランスの国際放送を聴いて見たいという希望の生じるのも亦、自然なことではあるまいか。
 毎日のプログラムの内容、又講演、修養講座の内容等について、文化的な面から見れば、今日の『キング』、『日の出』の内容に対しておのずから発する感想が屡々《しばしば》誘発されざるを得ない。大衆の要求に沿うた内容ということは、いずれの場合でも決して、現代の民衆生活の一番低い部分の水準に迎合して、そこ迄引き下げ止めておくということではない。ましてや、日常生活から生じる疑問を特定の傾向の中へそらして流して行くことでは決してないのである。
 日本におけるラジオ
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