村大尉がころされた。しかも好都合なことには、同じ満州に野心をたっぷりのイギリスでは、不景気の金輸出禁止でゴタつき政府がかわったり何かしている。ソラ、この時をのがすなとばかり中村大尉事件と鉄道ハカイを口実[#「口実」に×傍点]に、日本[#「日本」に×傍点]のブルジョアはワーッと満州[#「満州」に×傍点]にのし出し、〔二字伏字〕し、お手盛で手先となる支那ブルジョアを〔二字伏字〕政府[#「政府」に傍点]に〔三字伏字〕こんだのです。
 それを知ったイギリスのブルジョア、アメリカ、フランスのブルジョアが黙っていない。お前に満州や支那の利益を独占されてはやりきれないと、いろいろごてつく。――つまり、分け前のかけ合いをはじめた。ジェネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の国際連盟というものの本体はこれです。
 ところで、支那のプロレタリアート・農民の身になって考えて見て下さい。われわれが工場、農村でブルジョア・地主にしぼられるとおりしぼられ、しかもその地方のブルジョア御用軍閥が戦うたんびに税はとられる。畑は荒らされる。年じゅう飢饉も同じです。その上に、日本[#「日本」に×傍点]やアメリカ、イギリスの帝国主義侵略にあってだまっていられますか。
 支那の勤労大衆は立ち上って、あらゆる国のブルジョアの侵略絶対反対を叫び出した。支那に広いプロレタリアート・農民が自分の力で統治するソヴェト地方が出来ている。そこが中心となって反帝国主義侵略運動をおこした。
 白木屋の展覧会には、よくわけを知らない見物人に腹を立てさせるため、排日のビラだけを実によく集めて並べている。滑稽なことだ。支那の大衆は排日をしているばかりではない。排英です。排米です。そして、自分たちの国から支那のブルジョア・地主軍閥をも追っぱらい、すっかり働く者の国ソヴェト[#「ソヴェト」に×傍点]にしたいのです。
 ジェネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で国際連盟は、支那わけどりの割前について互にかけ合っているだけではない。どうしたら支那ソヴェト地方をぶっ潰すか、あわよくばソヴェト同盟もこの際ぶっ潰すかということを、熱心に研究している。
 わけ前については各国のブルジョアはいがみ合います。(この間ラジオJOAKで徳川公爵が国際連盟をこわがるナという、殿様らしくもないブルジョア・地主のメガホン役をつとめました。)しかし、一旦こ
前へ 次へ
全9ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング