ぞやってるときか、頓痴気奴! トテトテトウ! テテトテトウ!
 こんな胡魔化し騒ぎで命をとられるのはバカらしい。御免[#「御免」に×傍点]蒙りたいなどとは云わさない。この際戦争反対[#「反対」に×傍点]をとなえるような者は獅子身中の虫だと、やっつける。
 みなさん。ブルジョア・地主は遠い満蒙へ兵士をくり出したのではありません。実はここで、われわれ勤労大衆の盛りあがる力に向って、それをとっぷせるためにくり出しているのです。
 だから、いつもストライキを売ったり、賃銀値下げの片棒をかついだりしている社民、労農大衆党などというブルジョア・地主の手代無産政党は今度のことについて何と云っているか。主人に「ワン」と云えと云いつけられるとおり「ワン、ワン」とやっている。――搾られているわれわれ大衆の立場からでも、満蒙の権益擁護は認めることが出来るなどと嘘をついている。ブルジョア・地主につらまって、自分らを放っぽり出す正しいプロレタリアート・農民の力を、ついでに〔一字伏字〕そうとかかっているのです。
 われわれ働く者はみんな、婦人は云わずもがな、ハッキリ、事の真相を知っていなければなりません。
 満蒙を殖民地としたって、この世にブルジョア・地主がある間、われわれの解放は決してない。搾取者がある間、搾取される者の苦しみは消えない。不景気の根が絶えるとでも思ったら大間違いです。世界の不景気は、世界のブルジョア・地主自身がこしらえているものなのです。支那のわれわれと同じに搾られている大衆の知ったことか!
 機械は働くもののためにまわり、田畑は耕すものの幸福のために実る社会、ソヴェト同盟のようになってこそ、初めて首キリもなく失業もない世の中になるのです。
 働く者は、働く者の国ソヴェト同盟と支那ソヴェト地方の味方[#「味方」に×傍点]なのは当然です。ブルジョア地主がソヴェト同盟をつぶし、支那のソヴェト地方をやっつけ、つまりわれわれが当然の権利として解放されようとするのをやっつけようとする時、われわれは勇ましく〔十字伏字〕。
 まして、働く婦人はそうです。
 さて、満蒙事件についてはこの話のとおりですが、白木屋を出て、何とも云えない心持になった。
 僅か十一二歳のお下髪《さげ》に洋装の小学生が二人店の外に立っていて通る女をよびとめ、白木綿に赤い糸で一針ずつ縫って貰っている。俗に云う千人縫いで
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