「極めて重大視します」
「その他何か私の注意すべきことはないでしょうか?」
「あの晩の犬の不思議な行動に御注意なさるといいでしょう」
「犬は全然何もしなかったはずですが」
「そこが不思議な行動だと申すのです」

 それから四日たって私達はウェセクス賞杯争覇戦を見るために、再びウィンチェスタ行の汽車に乗った。約束通りロス大佐は停車場の入口まで来て待っていてくれたので、私達はそのまま大佐の四頭立《よんとうだて》馬車で市はずれの競馬場へ向った。大佐はひどく暗い顔をして、更に元気がなかった。
「私の馬を一向見かけないようですがね」
 大佐はいった。
「ごらんになれば御自分の馬だからお分りになるでしょう」
 ホームズはそういった。
 大佐はムッとして、
「私は二十年来競馬場に出入りしているが、只今のようなお訊ねを受けるのは始めてです。あの馬の純白の額と、斑の前脚とを見れば、子供にだって分ることです」
「賭けはどんな模様です」
「その点だけはどうも妙です。昨日なら十五対一でも売り手があったのに、だんだん差が少くなって、今では三対一でもどうですかな」
「ふむ!」ホームズは独りごちて、
「何か知っ
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