うものだ。あんな名馬は売ろうたって売れもしない。だから馬をつれて逃げるなんてことは、非常な危険があるばかりで、何等利益がない。これは間違いのないところだ」
「じゃ一体どこにいるんだろう?」
「いまいった通り、キングス・パイランドへ帰ったか、ケープルトンへ行ったに違いない。しかるにキングス・パイランドへは帰っていないんだからケープルトンへ行ったものに違いない。これを差当り実行的仮定として、それがどういうことになるか、研究してみよう。荒地《あれち》のうちでもこの辺は警部もいってるように極めて土地が固くて乾燥しているけれども、ケープルトンの方へ行くに従って低くなっていて、見たまえ、あそこに細長く凹《くぼ》んだところがある。あの辺は兇行のあった月曜日の晩には、非常にぐしょぐしょだったに違いない。もし我々の想像が当ってるなら、馬はあそこを通っているはずだから、あそここそ足跡が残っている場所でなければならない。」
 ホームズがこう話す間、私達はすたすたとその方へ歩いて行ったが、二三分で問題の凹みのところまで来た。ホームズの要求によって私はその凹みの縁《ふち》を右の方へ辿って行き、ホームズ自身は左の
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