共に去り、ホームズと私とは荒地《あれち》の中を静かに歩いていた。太陽はケープルトン調馬場の彼方に沈みかけて、眼前のゆるやかな傾斜を持つ平原は金色《きんしょく》に染まり、枯れ羊歯や茨のある部分は濃いばら色がかった褐色に燃えた。が、深い思索に耽っているホームズにとっては、それ等の光景は何んでもなかった。
「我々のとるべき道はだね、ワトソン君」
しばらくして彼はいい出した。
「ジョン・ストレーカは誰が殺したかの問題はしばらく措いて、馬はどうなったかを専ら考えてみよう。いま、馬は、ストレーカが殺されているうちまたは殺された後で逸走したものとすると、一体どこに逃げるだろう? 馬というものは非常に群集性の強い動物だ、だから、もし自由に放り出しておいたら本能的にキングス・パイランドへ帰るか、ケープルトンへ行くかするに違いない。どうしてこの荒地《あれち》をうろついているものか! それだったら今までにちゃんと発見されているに決まっている。また、ジプシーがどうして馬を誘拐するものか、[#「、」は底本では欠落]ジプシーというものは警察にいじめられるのを厭うから、何か事が起ったときけばすぐにその場所を引き払
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