を引き起こした原因になるべきいろいろな出来事について、きいたかね?」
「ええ、大体はききました」
「で、君の意見はどうかね?」
「私の見ました限りでは、この男は何かの恐怖のために精神に異常を来たしたものじゃないかと思うんです。――ごらんのようにベットには寝ていたらしい形跡があり、しかも彼のからだの形がそのまま深く残っています。――普通、自殺と云うものは、朝の五時頃に行われるのが一番多いと云うことはあなたも御存じの通りですが、彼の自殺もやはりその頃に行われたのじゃないかと思うんです。――しかしいずれにしてもこれは、慎重に考うべき事件らしいような気がします」
「筋肉のかたまりかたから見ると、死んでから三時間ぐらい経過していますね」
私は云った。
「その外に、この部屋の中で何か変ったことはありませんでしたか?」
ホームズは訊ねた。
「螺旋《ねじ》まわしと二三の螺旋を手洗い台の上で見つけました。それから前の晩にはよほどひどく煙草を吸ったらしい紙を見ました。ここに暖炉の中からひろい出した葉巻の吸いさしが四つあります」
「ふーむ」
ホームズは云った。
「彼の葉巻パイプを持ってますか?」
「い
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