、自分のもテーブルの上からつまみ上げて、トレベリアン博士の後について入口のほうに出かけた。こうしてそれから二十分ばかりの後、私たちはブルック・ストリートにあるトレベリアン博士の住居《すまい》の前で馬車をおりた。そして小さな少年の給仕が出て来て案内してくれたので、私たちは直ちに、美しいカーペットの敷いてある階段を昇って二階に行こうとした。
 と、その時、奇妙な故障が起きて、私たちはそのままそこへ立ちん坊をさせられるようなことになった。と云うのは、その時、不意に階段の頂きについていた電灯が消えて、暗闇の中から奇妙な震え声が聞えて来たからである。
「僕はピストルを持ってるぞ!」
 と、その声は叫んでいた。
「もしそれから一歩でも近よってみろ、俺はブッ放すから……」
「ブレシントン氏、何を乱暴なことをなさるんです」
 トレベリアン博士は叫んだ。
「ああ、博士、あなたですか?」
 その声は、ホッとしたように云った。
「だが、その他の男は何者ですか? 何をしに来たんです?」
 私たちは闇を通して長い間見詰め合っていた。
「分かりました。分かりました。さあどうぞ……」
 やがてその声は云った。
「ど
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