ったんです。――奴等の名前は、ビッドルとヘイワード、それからモーファット、とこの三人です」
「ああ、それじゃ、あのウォーシントン銀行事件の発頭人じゃありませんか」
 探偵は叫んだ。
「その通りなんです」
 ホームズは云った。
「そうするとブレシントンはシュウトンに違いありませんね」
「そうなんですよ」
 ホームズは答えた。
「またどうしてあなたは、まるで鏡に写し出すようにハッキリそれがお分かりになったんです?」
 探偵は云った。
 しかしトレベリアンと私とは、何が何だか分からないのでお互いに目を見合っているばかりだった。
「諸君は、例のウォーシントン銀行事件と云うのを知っているだろう」
 とホームズは云った。
「あの事件の中には五人の人物がいる。すなわち今いった四人と、それから五人目の男はカートライトと云ったんだ。トビンと云うその銀行の留守番を殺ろして、七千|磅《ポンド》を奪って逃たんだが、それは一八七五年のことだったんです。ほどなく五人のものはみんな捕まったんですが、相憎なことに証拠がすこぶる不充分だった。ところがこのブレシントンすなわちシュウトンなる男が、この男がまあ一番悪がしこかったわけなんでしょうが、たちまち寝返って密告しちまったんです。そこでブレシントンの密告のおかげでカートライトはとうとう主謀者と云うので死刑にされ、他の四人のものはそれぞれ十五年間ずつの刑を着せられたわけです。――が、やがてそれらのものも、各々特赦などに会って、十五年たたないうちにまた社会へ出て来ることになったわけです。そこで彼等は、自分たちを売って刑を着せたり、また仲間の一人を死刑にしてしまったりした男に、復讐をしようと計画したわけなんです。――彼等は二度計画して、二度とも失敗したんです。そして三度目にようやく成功したわけなのです。――と、まあ以上のようなわけなんですけれど、まだどこかお分かりにならない所がありますから、トレベリアン博士」
「いえ、実によく分かりました」
 と医者は答えた。
「そう云えば思い出します。彼等が助かってまた社会へ出て来たと云う記事が新聞へ出た日、彼はひどく神経をいためていました」
「そうでしょう。――ですから彼が起こした強盗騒ぎなんか、みんな嘘なんですよ」
「けれど、どうして彼はそれを打ちあけなかったんでしょう?」
「それはなんですよ、自分の昔の仲間がどんな
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