旧聞日本橋
序文/自序
長谷川時雨
三上於菟吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)時雨《しぐれ》は、

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(例)長谷川|時雨《しぐれ》

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   序文

 長谷川|時雨《しぐれ》は、生粋《きっすい》の江戸ッ子ということが出来なければ、生《はえ》抜きの東京女だとは言えるであろう。彼女の明治初期の首都の中心日本橋|油町《あぶらちょう》に法律家を父として生れて、最も東京風な家庭教育の下に育って来た女だ。彼女は寺小屋風が多分に遺《のこ》った小学校に学んだり、三味線、二絃琴《にげんきん》の師匠にも其処《そこ》で就いた。時雨は現在では、さまざまの思想と生活との推移から複雑な人になっているが、内心にはいつも過去の日本橋ッ子としての気魄《きはく》が残映して、微妙にその感情を操作しているように見える。
 とにかく、この『旧聞日本橋』は、きわめて素直に、少女期以来彼女が見聞した、過ぎし日の現象に関する記録である。人文史的に見るも意義なしとせぬと思
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