返事が来たんです。そこで私は証明書と願書とを送りました。でもその職業に有りつけようなどとは考えてもいなかったんです。――ところが返事が来て、次の月曜日に間違いなく時間までに来てくれれば、その日からすぐに私に仕事につかしてくれると云って来ました。――どうしてそんな風にして、思いがけなく仕事にありつけたものか、誰にも分かりません。ある人は、たぶんそこの支配人が、山と積まれている願書の中へ手を突っ込んで、最初に手に触れたものを引っ張り出したんだろうと申しています。が、とにかく私の所へ順番があたったんです。私はこんなに嬉しかったことはありません。――給料も一週に一|磅《ポンド》のぼりましたし、それでいて仕事はコクソンの店とちょうど同じようなことなんです。
さあ、いよいよ話の本題にやって来ました。――私はハムステッド町に間借をしてたんです。ポーター・テラス十七番地です。――ちょうど、私の勤めがきまった日の夕方、私は煙草を吸いながら腰かけておりました。するとそこへ下宿のおかみさんが、『アーサー・ピナー会計代理店』と印刷してある名刺を持って昇って来ました。私はそんな名前を耳にしたことがなかったので
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