義勇兵と競争者と運動家とを出す階級に属している人間であることを、物語っていた。そして彼の丸々とした血色のいい顔は、自然に愉快さで満されていたが、しかしその口の端には、彼が半分はむしろ喜劇的な不幸のためにすっかり沈んでいるらしい所が見えた。もっとも彼がどんな不幸に会って、シャーロック・ホームズの所へ飛び込んで来たかと云うことについては、私たちが一等車に乗り込んで、バーミングハムの旅に旅立ってからようやくきくことが出来たのではあったけれど……。
「七十分間この汽車で走るんだが……」
とホームズは云った。
「ねえ、ホール・ピイクロフト[#「ピイクロフト」は底本では「ビイクロフト」]さん、あなたの出会った今度の興味深い事件を、私の友達にも話してやって下さいませんか。私に話して下すったと同じように正確に、いや、もし願われるなら、それよりも精密に。――私ももう一度事件の関係をおききしたほうが、いろいろ参考にもなるんです。――ワトソン君、つまりこの事件の中に何事かがあるか、あるいは何もないかをしらべればいいんだ。しかし少くも事件は、実に奇妙な常規を逸したものなんだ。そしてそれは私にも君にも非常に興
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