をズボンのポケットに深くつっこんで、顎を胸に埋《うず》めたまま、テエブルの側《そば》に立っていた。
「今のうちに巡査を呼びにいっといたほうがいいと僕は思うんだが」
と、彼は云った。
「そして実は、巡査が来たら、終りになったこの事件をこのまま向うへ引渡してしまいたいと思ってるんだけれどね」
「私には忌わしい謎だ。――何の目的で、あいつ等は私をわざわざここまで連れ出したんだろう。そしてそれから――」
ピイクロフトは頭を掻きむしりながら叫んだ。
「馬鹿な! そりアもうすっかり分かりますよ」
と、ホームズはいらいらして云った。
「分からないのは、この最後の急な自殺騒ぎです」
「じゃ、他のことはみんなお分かりになってるんですね」
「極めて明瞭に分ってるつもりです。君の意見はどうかね、ワトソン?」
私は肩をすくませた。
「云いにくいけれど、僕には力に余るんだ」
私は云った。
「そうかね。だが、最初に、事件をよく注意して見れば、解決はただ一点に帰着するだけだよ」
「君はどんな風に解決したんだい?」
「いいかね、この事件のすべては、二つの点が中心となっている。第一の点は、ピイクロフトがこの盛
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