たはモウソンのほうはどうなさるおつもりですか?」
彼は云いました。――私はモウソンのことについては、余り喜んだので、すっかり忘れてしまっていたんです。
「手紙を書いて、辞職しましょう」
私は答えました。
「私がお願いしないことはなさらないように。――私はあなたをモウソンの店の支配人として知ったわけです。そこで私はモウソンにあなたのことをきいてみました。すると彼は大変機嫌を悪くして、――あなたを私が誘惑してあそこの店からつれ出すか、何かそんなことをするのだと云って私を非難しました。そんなわけで私はとうとう我慢がしきれなくなってしまったんです。で、「もしあなたが有為な人がほしいなら、もっとたくさん報酬をお払いにならなくてはなりませんよ」と私は云っちまったんです。すると彼は「あの男は君の所のたくさんな収入より、むしろ僕の所の少ない収入のほうを好むよ」と云うんです。そこで私は「あらかじめお断りしておきますが、あの男が私の店へ来るようになっても、あなたはお咎めになさらないでしょうな」と云うと「僕はあの男をどぶの中から引き抜いてやったんだから、そんなに容易《たやす》くは僕の店から出て行きあしな
前へ
次へ
全43ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三上 於菟吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング