君は一度に二発うたれたのだと云うようには感ぜられなかったかね?」
「さあ、それははっきりとは申し上げられないんでございますが――」
「しかしそれはきっとそうだったろう。さて検察官のマーティンさん、もうこの室で調査することは、全く尽きてしまったと思われるが、何でしたら今度は庭の方を歩きまわって、新たな証拠をさがそうじゃないかね」
書斎の窓の下からずっと、花壇になっていたが、我々はそこに近づいてみて、あっと驚かされてしまった。花は踏みにじられ、柔かな土の上には、足跡が一ぱいについていた。それは男性の大きな足跡で、特に足先が鋭く長い足のものであった。ホームズは草や木のあいだを、レトリーバー犬が傷ついた鳥を探すように、探しまわったが、遂に彼はひどく喜んだ叫びを上げて、身をこごめて、小さな真鍮《しんちゅう》の円筒を拾い上げた。
「僕はたしかに、ピストル又は、薬莢の自動排除装置があって、きっと第三弾があるに相違ないと睨んでいた、――」
彼は云った。
「さあ検察官マーティンさん、これでもうほとんど、この事件も調査が出来上ったですな」
この田舎検察官はしかし、ホームズのあまりに急速な、あまりにも
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