ったにしても、――おお、全能の神様よ、願わくばかくあらんことを!――その時はその時で、この手紙を破らずにしまっておけば、やはりいつかはお前の手に落ちてお前に読んでもらえるだろう。そうしたら私はお前の愛にすがって懇願する、お前の懐かしいお母さんを思い出して、そしてまた私とお前との間の愛を思い出して、どうか私を許し、これを火にくべてしまって、もう二度と再びこんなことは考えないことにしようではないか。
私はよく知っている。お前にこんな手紙を読ませるくらいなら、私はとうに私の家庭から出て行くべきであったと云うことを。でなければ、――お前は私が気の弱い男であることを知っているだろう。――だまって死んでいってしまうほうがよかったのだと云うことを。けれどもいずれにしても、もう隠しているべき[#「いるべき」は底本では「いべき」]時ではないのだ。私は少しもかくすことなく正直に話そう。そして許しを乞おう。
私の可愛い子供よ。私の名前はトレヴォではないのだ。私は若い頃には、ジェームス・アーミテージ[#「アーミテージ」は底本では「アノミテージ」]と云ったのだ。こう云えばお前は三四週間前、お前の学校友達が、私の
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