。
「もう英国の北の国にはあきあきしたよ」
と彼は云った。
「おいらハンプシャイアのベドウスさんとこへつっ[#「つっ」に傍点]走ろうかと思うんだ。あの人もたぶんお前さんと同様、おいらに喜んで会ってくれるだろうと思うんだよ」
「君は、何か感情を害して僕ん所から出て行くと云うんじゃないだろうね、ハドソン?」
僕の父親は云った。僕の血を煮えくら返すような屈辱的な馴れ馴れしい様子で。
「おいら詫びを云われなかった」
彼は僕のほうを意地悪そうにチラッと見ながら云った。
「ヴクトウ、お前はこの大切な客人を、失礼な扱い方をしていたとは思わないかい?」
親じは僕のほうを向いて云った。
「それどころか、僕たちは、こいつに出来るだけの辛抱をして来たと思っていますよ」
僕は答えたんだ。すると、
「おう、うぬ[#「うぬ」に傍点]ぬかしやがったな」
と彼は唸るように云った。
「野郎、よくもぬかしやがったな。覚えていろ!」
彼は足を引きずりながら部屋から出ていった。そしてそれから三十分の後、僕たちの家から出ていってしまった。気の毒なほど神経を病んでいる親じを後に残したまま。――それから毎晩毎晩、親じ
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