びてくれるかどうかと云うんだ。無論君の想像通り断ったんだよ。そして僕は親じに、どうしてああ云う無頼漢に、親じに対してもまた家庭の内ででも、こんなに勝手なことをさせておくのかときいてみたんだ。
「ああ、お前!」
と親じは云った。
「話してしまえば、それが一番いいんじゃ。しかしお前は私がどんな立場にいるか知らんのじゃ、だが、今に話してやろう。ヴクトウ。今に、きっと話さなくてはならないような事件がおきて来ると私は思っとるのじゃ。お前はお前の可哀そうな年とった父親が、危害を加えられるなんて云うことは信じられないのじゃろうな、ねえお前?」
親じは僕の言葉にひどい打撃をこうむったようだった。その日一日部屋の中に閉じこもってしまった。そして僕が窓からのぞいて見ると、親じはいそがしそうに何かを書いていた。
するとその日の夕方のことだった。僕たちには大きな救いのように見えたことがもち上った。と云うのは、ハドソンが僕たちの家から出て行くと云い出したからだ。ちょうど僕たちはお八つを食べに食堂に集《あつま》った時、あいつは、ほろ酔い機嫌のしゃがれ[#「しゃがれ」に傍点]声で自分のその考えを云い出したのだ
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