因が胃腸病にあつて、負傷にはなかつたが、その医師の留守に、養子の医学士が診断した時には負傷が原因で神経系統を害した、と明言したのであつた。
 前者の診断は患者に都合が悪くて、会社や組には都合が良かつた。後者の診断はその逆であつた。

 私は悲しい一つの死を繞つて、二つの立場があることを教へられた。
[#地から1字上げ](昭和十三年一月)



底本:「筑摩現代文学大系 36 葉山嘉樹集」筑摩書房
   1979(昭和54)年2月25日初版第1刷発行
入力:大野裕
校正:高橋真也
1999年10月2日公開
2006年2月2日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全22ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング