万福追想
葉山嘉樹

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ハッパ穴を穿《く》つてゐるのだつた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)梃でも[#「梃でも」は底本では「挺でも」]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
−−

 渓流は胡桃の実や栗の実などを、出水の流れにつれて持つて来た。水の引きが早いので、それを岩の間や流木の根に残して行く。
 工事場の子供たちは、薪木にする為に、晒されて骨のやうになつた流木や、自分たちのお八つにする為に、胡桃や栗の実を拾ひ集めるのだつた。
 胡桃の実も栗も、黒くなつてゐて、石の間や流木の間に挾まつてゐると、なか/\見つけるのに骨が折れたが、子供たちは大人よりも上手に見つけて、懐に入れたり、ポケットに入れたりして、それを膨らませてゐた。
 小さな渓流で、それにかかつてゐる橋は、長さ三間位もあつただらうか。出水の時は、恐ろしく大きな音をたてて、玉石などを本流に転がし込むのだつたが、ふだんは子供たちのいい遊び場であつた。
 清水の湧き出す処などを、うまく見付けて掘る
次へ
全22ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング