た。その五、六日後から修学旅行であった。
深谷は修学旅行に、安岡は故郷に病を養いに帰った。
安岡は故郷のあらゆる医師の立ち会い診断でも病名が判然しなかった。臨終の枕頭《ちんとう》の親友に彼は言った。
「僕の病源は僕だけが知っている」
こう言って、切れ切れな言葉で彼は屍《しかばね》を食うのを見た一|場《じょう》を物語った。そして忌まわしい世に別れを告げてしまった。
その同じ時刻に、安岡が最期の息を吐き出す時に、旅行先で深谷が行方不明になった。
数日後、深谷の屍骸《しがい》が渚《なぎさ》に打ち上げられていた。その死体は、大理石のように半透明であった。
底本:「ひとりで夜読むな 新青年傑作選 怪奇編」角川ホラー文庫、角川書店
1977(昭和52)年10月15日初版発行
1980(昭和55)年10月25日6版発行
2001(平成13)年1月10日改版初版発行
初出:「新青年」
1927(昭和2)年4月号
入力:網迫、土屋隆
校正:山本弘子
2008年1月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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