うになって来たんだ。
そして、ついに、警察によって刺激された若人《わこうど》どもは、立派な『無産階級軍の前衛隊』となり、なお加えらるる試煉によって、牢獄《ろうごく》も、絞首台も、恐るるに足らずという、固い信念の中に、生きるようになったんだ。そうして、そうなると、そこに待っていたものは、彼らの尻《しり》を引ったたいた鞭《むち》が、こしらえて待っていた陥穽《おとしあな》であった。いよいよ彼らは、現実に牢獄の塀《へい》に打《ぶ》っ突からねばならなくなったんだ。
ある年の秋だった。A工場のあるN市は、日本全国を襲った暴風雨の襲撃をこうむった。その程度は日本の諸都市中で最もみじめな部分に属するほどであった。
風が強くて、雨が横から吹いて、傘《かさ》がさせなかった。屋根|瓦《がわら》が吹き飛ぶので、街《まち》に出られなかった。海岸部分は軒先まで浸水した。水がひくと同時に、壊崩《くず》れた家が無数だった。船が海岸へ打ち上げられて、おもちゃ屋の店先における船のようであった。目ぬきの方でも、小学校が崩壊した。民家が倒れた。市民は外にも出られなかった。内にもいられなかった。
A工場[#「A工場」は
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