一々、鎖を順序よく並べなければならなかった。そうしないと、鎖が穴の下へたまってつかえてしまうのである。
 波田は、この箱のドブドブの中へ、カンテラをさげてはいるのであった。そして、金棒の先の鉤《かぎ》になったのを、落ちて来る鎖に引っかけては、順序よく並べねばならなかった。それは急がねばならぬし、力のいることだし、狭いところだし、ぬれていてすべることだし、暗くはあるし、油煙は立つし、息苦しくはあるし、そして、また、時々鎖から鉤がはずれると、肘《ひじ》で後ろの壁を力一杯つき飛ばすのであったし、鎖が一杯になって来ると、彼は、鎖の中に危うく身を構えて、それにはさまれぬように作業しなければならなかった。これは一航海に一度でもうんざりする仕事であった。それを、彼は、昨日《きのう》の朝から、二度目であるのだ。
 波田は暗い顔をして、チエンロッカーへおりて行った。彼は全く、それへはいる時は地獄《じごく》へおりて行くような気がするのであった。
 彼はチエンロッカーについて悲惨な物語を聞いていたが、それは、いつでも彼がチエンロッカーへはいる場合に、彼の記憶の中から、ムクムクと起き上がって来ては、彼を脅《お
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