ならぬ』といっているではないか、神はまさに糞壺にこそあるべきだ!」
波田によると神は恐ろしく、きたないところにもぐる必要があった。
「おれは便所に神を見た。それ以外で見たことがない」と波田は、いつ、どこででも主張するのであった。
「で、その神様は、おれのによく似た菜っ葉服を着て、おれより先にいつでも便所を掃除してる! それは労働者だった。賃銀をもらわない労働者の形をしていた!」と。
「で、もし、神様が、労働者でもなく、便所にもいなかったら、おれは、とても上陸して寺院や社祠《しゃし》などへ、のそのそさがしになんぞ出かけてはいられないんだ。人間から現実のパンを奪って精神的な食べられもしない腹もふくれない、パンなんぞやるといってごまかすのは神じゃないんだ。それやブルジョアか、その親類だ」
これが波田の宗教観であった。
「その神様が賃銀を月八円ずつさえ得てれば、そのまま波田君なんだがなあ。惜しいことには、たった一つ違うんで困ったね」藤原はそういって笑ったものだ。
船には、宗教を信ずるものは一人《ひとり》もいないといってよかった。ボースン、大工、この二人《ふたり》だけが、暴化時《し
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